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突然変異

 

【蓮の部分的な突然変異】
病気なのか奇形なのか蓮の雄蕊が花弁化したり、雌蕊が不規則に変形したり、雌蕊
の一部が花弁状になる例はよく見かけます。
また、1本の茎に2個以上の花が咲くケースは、「並帯蓮」「多頭蓮」ほか様々な名で呼ばれ、突然変異と言われてきました。

 

私が最も興味をそそられたケースは 刊行年不明の『植物集説』に有る奇妙な蓮。
添え書きが無いのでますます謎です。花托の一部に、紅色のコブみたいな物がくっついています。
この画の蓮は、蓮の古典に詳しい人でもまだ解明していないと思います。

花弁になりかけた蕊(しべ)の一部が病気でコブ状になったのか?。花弁の一部の変形か?。昆虫が花弁の一部を丸めたか?。他に目撃報告が無いし、大きな謎です。

 

【咲き分けの蓮】
嘉永6年(1853)刊行の『蓮図譜』飯室 壮左衛門著 のなかに、咲き分けの画が有ります。

白地に紅が少しずつ入る蓮の花弁が、一枚だけ半分紅色になっています。「旭昇蓮」と書かれていますが、添え書きには “元来斑蓮” とあります。斑蓮の仲間で不忍池の斑蓮は「ふちべに」とも呼びます。蓮の咲き分けが珍しいのは昔も今も同じ。


【双岐蓮】
カラー図版は宝暦8年(1758)5月に東都・不忍池で見つかった突然変異の蓮。

旧暦の5月は新暦で6-7月。1本の花茎が途中で2本に分かれ、それぞれに花が咲いてます。

寛保2年(1742)に、大阪の瑞龍寺の蓮池で「双岐蓮」が見つかった少し後に信州で洪水が起きたと謂います。


享和2年(1802)江戸深川の泉養寺の蓮池で見つかったときは江戸で話題になり、この蓮が見つかった翌日は豪雨になったと謂います。

鶏卵(生卵)の場合、1個の卵から黄身が2個出ることが有ります。この、“双子の卵が多く見つかる年は天災が多いのでは…” と言う人もいます。

 

謎めいた品種

【阿蘭陀蓮 おらんだはす】
『白川候蓮譜』がいち早く記録したと謂われる品種で、ほかの蓮譜が後を追う様に紹介しています。
添え書きでは “白い花弁の中心部が黄色”とあります。遠目に見ると、淡黄色に見えたかも。

『清香画譜』の阿蘭陀蓮は、黄色でなく薄茶を帯びた白蓮。花托はダークグリーン。
昔は舶来の物を呼ぶのに「阿蘭陀●●」などと言ったそうです。
私は、阿蘭陀蓮の由来を知らないので、「ひょっとしたら舶来の品種?」と想像します。
他の品種の別名かも知れません。


【緑紅白蓮】
有名な『清香画譜』の「乾の巻」にでてくる品種。白蓮の一種で、花弁が薄茶を帯びています。
天候が悪くて膨らんだ蕾がなかなか開かないと、白蓮の場合、成熟した蕾は閉じたまま茶色を帯びてきます。悪天候の影響なしに無事に開花した白蓮でも、外花弁から茶色くなることが有ります。

「緑紅白蓮」と呼ばれているのに、紅色がありません。なぜでしょう?。

古典史料の珍品種

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